新聞はもはや、ちょっとした話題ですら事実にはリーチしてくれない

『MSN産経』等に、ちょっと気になる記事を見つけました。

リンク: 「和歌山県橋本市で展示の機関車、半世紀前の事故に関与 発見した男性が犠牲者追悼へ」事件です‐事故ニュース:イザ!.

リンク: 和歌山県橋本市で展示の機関車、半世紀前の大事故に関与 発見の男性が犠牲者追悼へ (1/2ページ) – MSN産経ニュース.

和歌山県橋本市の橋本運動公園に展示されている蒸気機関車「C57110号」が、半世紀前に三重県内の旧国鉄参宮線(現JR紀勢線)で発生した脱線転覆事故にかかわっていたことを同市内に住む社会保険労務士、森本宏さん(73)が突き止めた。修学旅行中の埼玉県の高校生ら42人が死亡する大惨事だっただけに、森本さんは「意外な過去があることに驚いた」と話し、事故が起きた10月15日の前日、機関車に花を飾って高校生らの追悼を行うという。

この記事では、社会保険労務士のおじさんが、保存されている蒸気機関車に隠された意外な事実を「発見」したことになっています。

しかし、六軒事故とは日本の鉄道史に残る大事故です。明治大正や戦中戦後の混乱期ならまだしも、昭和31年の大事故で、裁判もきちんと行われた六軒事故において、その当該機関車の情報が秘密や謎であるわけがありません。

事実、Web上ではいろいろなところで、C57 110が六軒事故の当事者であることが書かれています。

リンク: 事故と安全対策の歴史.

昭和31年(1956年)10月15日18時22分、参宮線(現在は紀勢本線)六軒駅で下り243快速列車(9輌・C51-203 C51-101牽引)が10分の遅れがあったため臨時停車させ、上り246快速列車(11輌・C57-110 C51-172牽引)と行き違いをさせることになった。しかし下り243列車は信号誤認のためか通過速度(60km/h)のまま進入し、出発信号の停止現示を見て非常ブレーキをかけたが停止できずに安全側線に突入し車止めを突破してしまい、機関車2輌と客車3輌が脱線転覆して上り線を支障してしまった。間もなく上り列車が駅に進入し、脱線した下り列車と衝突し上り列車は機関車2輌と客車1輌が脱線転覆して両方の列車あわせて死者40人負傷者96人を出す大事故となった。下り列車の乗客の多くが修学旅行の生徒であったこともあり、厳しい批判を受けることとなった。

リンク: 煙の記憶.

◆C57110号機について
この機関車は事故復旧車である。(ボイラー前端部の形状が他のC57と異なるとのこと)
昭和31年10月15日午後6時20分ごろ、参宮線・六軒駅で下り快速列車が安全側線に進入、
脱線転覆したところへ上り快速列車が突っ込んで大事故となった。この当事車両である。
このC57110号機、無煙化廃車後の1974年(昭和49年)ごろは亀山駅7番ホームわきに
雨ざらしになっていたとのことである。

リンク: 関西地域の保存車輌data.

好天に恵まれた橋本市の総合運動公園は家族連れや部活の生徒たちでにぎわっていますが、その一角に保存のC57110は特に人に囲まれ ることも無く静かにたたずんでいました!・・・昭和31年10月15日18時22分、参宮線六軒駅に臨時停車しようとしていた鳥羽行き 下り快速列車(C51重連、客車9両)がオーバーランして安全側線で脱線転覆、その防護のいとまもない20数秒後に行き違いの上り名古 屋行き快速列車(C57110、C51重連、客車11両)が進入し、時速55キロで転覆客車に突っ込み42名死亡94名重軽傷・・・死 者の多くはこのC57110が突っ込んだ客車の修学旅行の学童だったとは・・・。こんな悲惨な歴史の証人である機関車だとは知るよしも 無く、今日も運動公園では学校の生徒さんたちが楽しく過ごしていました・・!この事故を契機に当時の国鉄は懸案だったATS車警装備を行ったんですよね!転覆横転したC57110はその後改修され、晩年の活躍は よく雑誌等に載っています!

事故復旧にあたり、他のC57とは異なる正面形状になったので、現役当時から知られた存在だったことも伺えます。

保存されている場所に、この機関車の由来についての説明が無くて、しかも土地に縁のある機関車というわけでもなく、調べてみたら、そういうことだったのか……というのは、理解できます。追悼しようという気持ちも、もちろん理解できます。でもこのおじさんが事実を「発見」したわけじゃないです。上記の記事ではどこをどう読んでも、このおじさんが埋もれている資料をあたり、事実を掘り起こしたように受け取れます。

新聞社なら、調べればわかることだと思うのですが、調べてはくれないのですね。もしくは、わざと「発見」としているのかもしれません。


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